きのこ山巡視道 [Nov 13, 2024]
この図表はカシミール3Dにより作成しています。
2024年も夏がいつまでも続き、ようやく涼しくなったら11月だった。そろそろ筑波山の季節である。 筑波山も難しい山で、夏は虫や蜂やヘビが多く、冬は凍結して岩が滑る。しばらく前に転倒して負傷したスネの傷跡がまだ残っていて、もう消えないかもしれない。標高800mとはいえ、結構危ない山である。秋から初冬がベストシーズンだが、最近は夏が終わるとすぐ冬である。 つくば市内を通ると、間近に迫ったつくばマラソンの通行止め注意看板が至る所に立てられている。まだハーフマラソンも満足に走れないので遠い道のりであるが、精進していつか走りたいレースである。まさに、筑波山に向かう時通る学園西大通りがコースである。 つくば市内で信号待ちが多く、真壁に着いたのは8時半過ぎだった。今回は、きのこ山から下りてくる予定なので、真壁城跡の駐車場に止める。サイクルロード駐車場よりずっと広いけれど、手近にトイレが見当たらない。体育館が開いている時刻であれば使えるのかもしれない。 身支度して、白井集落に向かって北上する。20分ちょっと歩いて右折、集落内の道に入る。ここは春に下ってきた道で、途中に「足尾山→」の道案内があって、そこから直登できそうなので次回登ってみようと思っていたのである。オフロード白井まで、結構長い道のりである。 オフロード白井(しらい)はオフロード車やオフロードバイクのコースがあって、愛好者には有名であるようだが、コースより有名なのは険道である。ここから一本杉峠までは県道なのだが、「車両通行不能」の看板が立てられている。「禁止」でなく「不能」というのがミソである。 察するところ、茨城県として保全や補修はあきらめたので、通る人は自己責任でお願いしますということらしい。もちろん歩行者は通れるし、車高の低い車は無理だがバイクやオフロード車は実際通っている。それらのベースとなっているのがオフロード白井である。 オフロード白井まで舗装された道だが、ここから先は砂利道である。いくつか採石場があって、その先に「←一本杉峠」「足尾山→」の分岐がある。今回は足尾山に直登するつもりなので、足尾山の標識に沿って進む。 ところが、標識の先はまたもや採石場で、ブルドーザーが止まっている。直進する道には「関係者以外立入禁止」の立札があって、進入を拒んでいる。立札を避けて茨城名物のタイヤ痕を追うけれども、踏み跡はすぐになくなってしまう。その先は、雨水の溜まったぬかるみの斜面である。 少なくとも、林道とか登山道と呼べる道ではない。かつての参拝道なのでそれなりの道であるはずだが、採石場を通らずに進むことはできないようだった。あるいは、立入禁止の奥が正規の道なのかもしれない。 残念ながら直登をあきらめて、以前下った険道を登ることにする。ここなら、保全こそされていないがともかく県道である。少し戻って、一本杉峠への登りにかかる。 相変わらずの道で、砂利道なのか沢なのか判然としない。時折石垣やコンクリ壁が現われるが、それに沿って道路があるとは限らない。とはいえ、下った時は細い道に入ったりしたのだが、登りはほとんど迷うところがなかった。初見でなかったし、前後してバイクが通っていたこともある。 いくつかある難所を抜けて、登って行く。下りで岩の道だと滑る心配があって時間がかかるけれど、登りは浮石などに注意すれば登るだけである。意外と早く最後の一枚岩の難所まで通過して、後は車でも問題ない普通の砂利道である。 採石場跡で進路変更してから、1時間ほど歩いて一本杉峠に着いた。11時少し回っていたので、ここでお昼休憩とする。 この日は真壁城跡の駐車場を利用。白井集落を経由して足尾山を目指す計画。 これから歩く足尾山からきのこ山の稜線。快晴・無風で山日和の一日だった。 白井集落奥から「足尾山→」の案内に沿って行くと採石場に出てしまう。立入禁止看板とどろどろの踏み跡を前に撤退を余儀なくされてしまった。 一本杉峠の休憩所は、これまで道路から見上げたことはあったが、休むのは初めてである。石造りのテーブルとベンチがあり、あまり使う人がいないのか苔で緑に染まっているけれど、使う分には問題ない。腰を下ろして一息つく。 お昼は、奥さんに作ってもらったチーズとジャムのサンドイッチ。シンプルだけれど、悪いものが入っていないので安心である。いつものようにテルモスでインスタントコーヒー。糖質制限以来カップヌードルを食べないので、ガスバーナーを使わなくなった。 正午前に腰を上げて、足尾山方向に進む。舗装された林道であるが、結構傾斜がある。考えてみると、ここを下りてきたことはあるが、登るのは初めて。前は、左に山道を入って登ったのだった。 20分ほど歩くと、ようやく下り坂となる。少し先が足尾神社の分岐で、足尾山はまだ100mほど高い位置にある。足尾山頂もいい眺めだが、林道からでも麓はよく見える。分岐のすぐ先がパラグライダーの離陸場で、西の真壁方向、東の八郷方向、両方ともこれから飛ぶ人たちが準備していた。 離陸場だけに麓までさえぎるものはなく、天気もいいので眺めは申し分ない。飛ぶ人はもちろん爽快だろうが、見ているだけで胸がすくような景色である。待機している係の人達と「いい天気ですね」と挨拶を交わす。平日だけれど、お客さんも多いようだった。 ここから先の林道は、基本的に下りなので楽である。右足と左足を交互に出しながら、初冬のやわらかな日差しを浴びた山歩きはとてもリラックスする。ヘアピンカーブを曲がり、少し登り返すときのこ山に達する。 この日は家を出たのが遅かったし、その影響でつくば市内が混んだので、あまりゆっくりすると帰りに時間がかかる。とはいえ、きのこ山の休憩所に寄って腰を下ろす。ちょっと休んで、これからのコースを再確認した方がいい。 この日の計画は、足尾山までの登りときのこ山からの下りだけが初見で、途中は何度か通ったコースであった。しかし、直登する道を見つけられず一本杉峠まで登ってしまったので、下りも分からないと経験済コースだけで終わってしまう。せっかくなので、少しは新規のコースを歩きたい。 きのこ山への登り下りは、これまで関東ふれあいの道を使っていた。真壁城からつぼろ台の登山道と、上曽峠までの舗装道路である。ただ、鈴木さんの本やWEBをみると、上曽峠まで下りる前に真壁への道がある。 目印となるのは、「山火事注意」の看板らしい。ここから踏み跡をたどると、それほど迷う場所もなく林道まで出られるようだ。 関東近郊で「山火事注意」というと横断幕を想像してしまうが、10分ほど歩くと道の右手に、金属製のしっかりした看板が立っていた。桜川市の立てたもので、しっかりしているものの錆びてしまっている。すぐ横に「水源かん養保安林」の看板もあるから、場所は間違いなさそうだ。 それらしい踏み跡があるが、一面薮なのでどちらに進めばいいのかよく分からない。尾根道という情報だから、下り斜面でなく上り斜面を進む。すると、目の前に見慣れた赤いプラスチック札が現れた。「境界見出票」である。 ということはここは国有林で、これから進む道は巡視道ということである。いっぺんに安心した。巡視道なら筑波連山で何度も通っている。赤テープこそないものの、境界見出票がテープ代わりになるし、国有林の境界はほぼ尾根なのである。 一本杉峠までの県道は相変わらずの「険道」で、道だか沢だか区別がつかない。ただ、下から登る分には迷う場所はない。 一本杉峠の休憩所でお昼にする。ここは何度か通ったが、少し登った場所にあるのでこれまで休んだことはなかった。 足尾神社の分岐付近。晴れて暑くも寒くもなく、パラグライダー離陸場からの景色は最高だった。これから飛ぶ人達が準備していた。 国有林巡視道は、これまで何度か歩いたので少し慣れてきた。三角点に似た標柱が尾根の目立つ場所にあり、近くの木に赤いプラスチックの境界見出票が結んである。境界見出票には通し番号が付けられていて、次は1つ上か1つ下の番号になる。 標柱間の間隔が広い場合には、「補」ないし「ホ」の番号が付いていて、標柱でなく石に彫られているケースもある。坊主山の男ノ川ルート入口に書いてあるのは何の意味かと思っていたのだが、国有林管理用のものだった訳である。 すごく細かくて見づらいけれど、林野庁のホームページには実測図のコピーがアクロバット・リーダーで開けるようになっている。1/25000図と違って実物を購入できないのが玉に瑕だが、方向の目安をつけるには役立つ。国有「林」なのでほとんど景色は開けず、方向が分かりづらい。 さて、国有林巡視道なのは分かったが、だからといって安心はできない。尾根を進む道だろうとは思うが、尾根の分かれ道があるし、足元は急斜面である。しばらく進むと、巡視道のメインに達したらしく踏み跡は明らかになるが、境界見出票を見逃さないよう慎重に進む。 WEBによると、この巡視道は並行して伸びる林道に出るらしい。林道は北側、つまり右手から合わさるはずである。それで右側を注意するけれども、急斜面が谷へと切れ落ちて間もなく合流するようには見えない。15分、20分と進むうちに、再び踏み跡が怪しくなってきた。 どちらの方向に進んでも木の枝が邪魔して、まっすぐ進めない。目の前には蜘蛛の巣が縦横無尽で、何度も大きな蜘蛛にぶつかりそうになった。国有林とはいっても頻繁に管理される場所ばかりではないだろうし、尾根だけ見る訳ではないだろうから歩かれない道もある。 気がつくと、しばらく赤プラスチックを見ていない。どこかで巡視道から外れてしまっただろうかと不安になる。筑波山だと岩に赤ペンキで印をつけてあることが多いが、きのこ山はそれほど巨岩・奇岩がない山域である。 いずれにせよ、尾根を下っていけばどこかの道に出るはずと思い、尾根らしき踏み跡を下りて行く。すると、少し先に人工物らしきものが見える。近づくと、担当者の名前と管理用の記号らしきものが書かれたワープロ打ちのカードが枝にくくりつけてあった。 このカードから先で少し傾斜はきつくなるが、高い樹木や深い薮がなくなり人里が近い雰囲気が出てくる。急坂を下るとその先は広くなり、路盤のコンクリが緑色に染まった林道に合流した。 ここまで歩いた巡視道も登山道として歩きにくくはないが、林道は平らなのでさらに歩きやすい。5分ほど下ると谷田部さん宅で、土地の人でなければ私道と思ってしまうかもしれない。おそらく、もともと林業用に整備された林道と思うが(実は違った。詳しくは次回の登山記録で)、よく管理されている。 林道を下って県道と合流する反対側に、水分神と馬頭尊の石碑が立てられていた。筑波山周辺には、この種の石碑がたいへん多い。明治時代より前には、人口も経済力もいまよりずっと大きかったであろう。 よく考えれば、先日走った将門マラソンの岩井も、筑波からまっすぐ広がる平野部の向こう側である。つまり、明治どころか、平安時代以来開かれてきた水田地帯であり、平将門も上総介平忠常もこの周辺を地盤としたので有力武将だったのである。 現在の茨城県が大きな経済力を持っていたのは官名にも表れていて、常陸守は親王が任ぜられる通例であった。皇族以外が就けるのは次官の常陸介までで、だから武士が通称名とする場合も親王任国の「守」は付けない。織田信長が上総介で、大岡忠相が越前守なのはその名残りである。信長くらい偉くても「上総守」は付けないし、千葉県を治めていた訳でもない。 県道に出て麓を見下ろすと、まだ30分くらいかかりそうなのを見て先は長いと思ってしまった。きのこ山はどう登っても下っても1時間半かかる山のようである。 この日の行程 真壁城駐車場(40) 08:45 きのこ山の「山火事注意」を入る踏み跡は、国有林巡視道だった。左側の木に「境界見出票」の赤いプラスチック札が見える。これを赤リボン代わりに下る。 道はそれほど分かりにくくないが、蜘蛛の巣をかき分けるのに苦労した。林道に出て一安心。 林道から県道に出たところに、水分神と馬頭尊の石碑があった。この周辺はこうした石碑がたいへん多く、かつては人口も経済力もある地域だったのだろう。
9:20 白井集落分岐(40) 09:20
10:20 岩石採取所分岐(146) 10:20
11:05 一本杉峠(428) 11:30
12:00 足尾神社登り口(535) 12:00
12:35 きのこ山(527) 12:40
14:15 真壁城駐車場(40) [GPS測定距離 15.2km]
不動坂・きのこ山 [Nov 30, 2024]
この図表はカシミール3Dにより作成しています。紫線は前回歩いた経路。
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